歴史と伝統の中日川柳会の秀句

平成28年9月/中部地区川柳大会の秀句
「メガネ」 今田久帆 選
原爆のむごさを溶けたメガネ知る 時任敏子
お眼鏡に叶わぬ嫁に介護され  山田とく子
針穴に母の眼鏡が吸い込まれ  松代天鬼
「メガネ」 表よう子 選
指メガネ覗くこの世は美しい  柴田比呂志
メガネ外し今日は無題の日としよう  川村道子
新しいメガネが空気入れかえる  恵利菊江
「せっかち」 鈴木恒夫 選
せっかちな男が掴む導火線  島津敏子
せっかちで運命線が蛇行する  戸田久子
せっかちな風は気にせぬ風見鶏 堀内重紀
「せっかち」 丸山進 選
かくれんぼ見つかる前に顔を出す  高木みち子
ついでにと明日の日記も書いておく  菱田文
行列のできる店とは縁がない  松長一歩
「角」 浅野滋子 選
角質がポロポロ落ちる詩と出会う  松谷早苗
街角にドラマの種が落ちる秋  戸田冨士夫
角がとれわが世渡りの回顧録  竹内そのみ
「角」 板橋柳子 選
絶望を掴む荒野にある角度  島津敏子
わたくしの小さな角を守り抜く  木村英昭
鋭角にあの世この世が行き来する  中川洋子
「吹く」 奈倉楽甫 選
吹き抜けた風さえ今は愛おしい  猫田千恵子
上下などないから温い風が吹く  河合正秋
吹き矢では届かなかったプロポーズ  小林祥司
「吹く」 松代天鬼 選
脱デフレ風は富裕に向いて吹く  伊藤久二夫
風が吹く日が楽しみなススキの穂  小出順子
草笛を吹くと昔が腰かける  松浦繁子
「伏せる」 荒川八洲雄 選
感情は伏せて聖書を読み返す  西尾美義
一枚の白紙伏字を嫌い抜く  鷲尾貞子
伏せ縫いの裾に絡んだ絹の撚り 中川洋子

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